波と波間の物語り

9月9日(金)~10月30(日) 11:00-17:00 毎週 金・土・日 開廊

 この度アートギャラリー目白山では「波と波間」をテーマとした9名の作家の展示会を開催しております。
版画、アクリル、写真など技法も様々なものになります。

 河内成幸は、誰もが葛飾北斎を連想する波と富士山の組み合わせに、大胆にも鶏やペンギン、天使と称する鳥の群れを羽ばたかせます。大波が繰り出す波しぶきと、画面を縦横に走る無数の曲線がもたらす躍動感。加えて、巨大な月を配したり、背景を黄金に染めてみたり、花吹雪を散らしたヴァリエーション作品も、目に楽しく、見応えがあります。

 奥西千早の作品にも波と花が重ねて描かれていますが、波には日本画の正統的な描き方が踏襲されているのに対し、花はラフなタッチの抽象的な形が採られています。また、一つの画面の中に和と洋の表現、離れた場所や異次元空間を思わせる描写、楽譜や論考のような思索の跡が描き込まれた作品もあります。それは奥西の作風として、長い絵巻物を紐解くように、複数の小作品に各場面を描きつつ、個々の作品の中に、前後を連想させる要素をちりばめているからです。このたびご紹介する2点の他にも、奥西のつむぐ物語は波を介して繋がり、広がっているのです。

 山下誠二の作品はジャンルとしては写真なのですが、人間国宝の安部栄四郎の流れをくむ手漉きの和紙に写真をプリントするという特異な技法が用いられ、色味が黒や濃紺のグラデーションであるために、水墨画のような淡白な風情を醸し出しています。抑えられた色調ながらも、船の浮かぶ凪の海、荒ぶる沖つ白波、沖合の潮目が着実にとらえられ、波の持つ力強さが感じられる力作です。

 岩澤あさ子のシュールレアリスティックな海景。
2022年5月には当ギャラリーで個展<ASAKO IWASAWA>開催。

 村山之都による、一つの波の表情、そのすぐ上で波間に魚を追うカモメの一瞬の動きが瑞々しく描かれた水彩画。
2022年7月には当ギャラリーで個展<湘南 Water Collars>開催。

 古山浩一の万年筆が、緻密さとバランスの良いおおらかさをもって描き出すシチリア島の岬・・・訪れたことがない場所でも何故かよく知っている場所のような郷愁の想いが湧いてきます。

 出射茂、松井浩一の作品に描かれた抽象的な表現に皆様の耳を傾けていただければ、波と波間からの潮騒が聞こえてきそうです。

それぞれの波と波間、広い海が描かれた作品の中に、かならずや皆様の琴線に触れる作品があるものと思います。皆様のご支援とご来廊を心からお待ち申し上げます。

 皆さまのお越しを心よりお待ち申し上げます。

Art Gallery 目白山

<出展作家>

河内 成幸

奥西 千早

山下 誠二

岩澤 あさ子

村山 之都

古山 浩一

出射 茂

松井 浩一

影山 萌子
(10月より展示)

9名(順不同・敬称略)